嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
「へえー」
「うわ、興味なさそうですね」
「おじさんのなら興味あるわよ」
ただおじさんは研究し出すと、暫くその素材にこだわる。
一時期は栗、その前は苺。今年は抹茶に拘っていて、そろそろその素材の味に飽きてきている。
「ねえ、美麗ちゃん」
咲哉くんが幹太の様子を覗いている隙に、そっと尋ねる。
「昨日、美鈴ちゃんがうちに私に会いにきたけど、家ではどうだった?」
「ええ!?」
びっくりして飛び上がった美麗ちゃんはすぐに口を押さえて、視線を幹太が居る調理場へ向けた。
「幹太が送ってくれたみたい?」
「はい。そうですけど、その、沈んだ顔をしてたから何があったかなんて聞けなくて」
「そうよねえ」
色々、よく考えたら失礼な事を追ってしまったと思う。
恋愛に全力でぶつかっている美鈴ちゃんと、全力で背を向けている私では、相容れなくても仕方が無い。
「でも、美鈴も現実を受け止めるのが嫌で、八つ当たりしてばかりです」
苦笑する美麗ちゃんには、幹太と美鈴ちゃんの複雑な気持ちはきっと理解できないだろう。
根源に私がいることも。