嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
開店と同時に電話や御客もちらほらやって来る。
おはぎの注文は相変わらずだ。私も何個か注文しているけど、当日の御客をさばくのは大変そうだと腹を括ろう。
「今日は、幹太さん、一度も店に顔を出しませんね。桔梗さんと美麗さんに挨拶しましたか」
調理場で、空気も読めない咲哉君が幹太に話しかけているのを聞いて、小突いてやりたくなる。
せっかく来ないんだから、誘導して来ないで。
「別に。用事があるならそっちから来い」
素っ気なく答える幹太に、むかむかと怒りが込み上げてくるのを感じた。
つい、レジの横にあるメモ用紙を、幹太の頭めがけて思い切り投げつけてやった。
スコーンと漫画の様に命中したのは、面白い。
「うわあ、大丈夫っすか。幹太さん!」
「大丈夫よ。考え方も頭も硬いみたいだから、その馬鹿」
ふんっと鼻息荒くそいつを睨むけど、頑なに此方を振り向こうともせず、痛いはずの頭を擦りもしない。