嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
18:50

「おりゃあああっ」

暖簾を入れると同時に、調理場へ直行した。
仕事さえ終われば、幹太を殴ろうが叩こうが自由だと思って。

「や。おつかれ、桔梗ちゃん」

「おじさん」

調理場には、おじさんが一人、のんびり御餅を食べながら御茶を啜っていた。
さっきまでいた咲哉くんや幹太の姿は無い。

「幹太は?」
「逃げたよ」
「に?」

やっぱり! 背を向けて逃げちゃうなんて。

「幹太がこんなに和菓子に興味を持ったのも、桔梗ちゃんのおかげだから、感謝しているよ」
「いやいや、あいつは気づいた時からずっと和菓子馬鹿ですよ」

おじさんと何気なく会話しながら、廊下の扉を開ける。
ボートには何も書かれていなかったけど、車の鍵は無くなっていた。

「いいや、桔梗ちゃんに言われてからだよ、あいつが和菓子に興味を持ったのは」
「私?」
「桔梗ちゃんが覚えていなくても、あの不器用な息子はずっと覚えて、その言葉を糧に生きているんじゃないかねえ」


大げさかなっと笑うけど全然大げさではない。
あいつならやりかねなかった。

「ねえおじさん、幹太の行きそうな場所って分かる?」

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