嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
「知らなかったの?」
ふふんっと小馬鹿にした笑みを浮かべながら、巴ちゃんは煙草を吸っている。
幹太は私に背を向けたままだった。
「この子が、バイク好きだって、貴方、知らなかったの?」
「し、知るわけないじゃん!」
「晴哉が居たから? じゃあ、晴哉が居なくなったら、寂しさを幹太で埋めちゃう? 都合が良いものね。この子、貴方しか見てないし」
巴ちゃんの言葉の端々が嫌みったらしくて、オカマの癖に女独特の粘着質な表現を使いやがる。
「あんたに用はないわ。利用されたくないなら、私に関わらなきゃいいんだもの」
それでも背を向ける幹太に、思い切り舌打ちしてしまう。
「で、この前の件や今日の朝の爆弾発言について、お話頂こうかしら?」
背中のすぐ後ろまで歩み寄るけど、幹太は大きなぬいぐるみみたいに返事もしない。
思い切り、バイクに足を乗せながら、私も覚悟を決めた。
「私がぶつかるって言ってるんだから、腹をくくりなさいよ、馬鹿!」