嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
懐かしげに、幹太はそう呟く。
昔を懐かしむように、思い出に馳せる。
「朝を待って紫色の空を見上げて咲く桔梗は、俺が庭の花の中で一番好きな華だった。健気で真っ直ぐで、綺麗で。桔梗の花の前で笑うお前を見て、――子供心にずっと守ってやりたいって、この花を俺は守ってやりたい、こいつが宝物だというあの店だった俺が。そう決意したんだ。お前に初めて会ってから」
ゆっくり一呼吸すると、もう幹太は背中を向けなかった。
「ずっと、お前が好きだったよ。ずっとずっと、だ」
その瞬間、溢れだしてきた感情を、私は一くくりにはできない。
嬉しさや寂しさ、切なさ、恥ずかしさ、愚かさ、私に隠れていた様々な感情が次々に溢れていく。
シンプルで飾らない幹太らしい言葉だから尚更だ。
「お前が泣くのは、ズルイだろ」
「だって、ううぅ。泣いてないもん」
嬉しくて、悲しくて。
今まで数えきれないほど傷付けていたかと思うと、自分が恥ずかしい。