嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
見えなかったのと見なかったのでは、もう罪の重さも違うと思うんだ。
私は、貴方の事――好き。

桔梗の花に溜まっていく朝露のように、貴方の気持ちも私の気持ちも、もう隠せない。
キラキラと輝いている。

じゃあ、晴哉の帰りを待つのを止めて、幹太の隣に歩いていけるのかな。


「おかえりなさい、桔梗ちゃん」

とぼとぼと重い足取りで家に帰ろうとして、家の門の前に巴ちゃんがいた。
「壁に擬態しないでよ……」
今は、もう誰にも会いたくなかったのに。
「私ね、レーサーになるとき、親に散々反対されて、親父やおじいちゃんにぼこぼこにされるぐらい反対されて。まあ、そうよねぇ、喧嘩ばっかしてきて、ロクに勉強もしなくてさ。それなのに、レーサーとかふざけた夢を語るなんてね」
急に、家の前で始めた話に、面食らいつつも、巴ちゃんの狙いは何なのか聞き入ってしまう。

「一緒に頭を下げてくれたのは、晴哉よ。私に馬鹿にされたりいじめられそうになると、幹太が二倍になってやりかえりて来て、ぬくぬくと守られていた晴哉が、私の為に頭を下げてくれたの。一緒に土下座までしてくれて、ね」

「晴哉が……」

信じられない。こんな奴にまで晴哉が優しくしてたなんて。
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