嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
それを見て、幹太が私をお義父さん達に託すと、転がっているバイクと倒れている人の元へ駆けよった。
垣根の中に、お尻からすっぽり埋まっている男の人は、袈裟を着ている。
袈裟とバイクのヘルメットがアンバランスで、その光景だけが現実から切り取られたように異質だった。
「さっさと起きろ」
胸倉を掴んで乱暴に起こされたヘルメットの男は、小さく『いてて』と呟いた。
「待ってよう。もう! 乱暴ねぇ」
――え?
今、低い声で女みたいにしなを作った声が聞こえたような。
「あーあ。クソジジイの代わりに慌てて来てみたら、もうツイテナイわっ 私のバイク、立ち上がらせるの重いのよ。80キロはあるんだから。嫌になっちゃう」
そう言いつつも、その80キロあるらしいバイクを軽々と持ち上げて起こすと、傷は無いかときょろきょろと探しだす。
その光景に、未だに恐怖で身体は竦んでいたけれど、好奇心も沸き上がった。
「あの、誰ですか?」