嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
「やだ。怖い」
「お前、さっさと出て行け」
顎で外を指す幹太に、オカマは挑発的に嘲笑う。
「相変わらずね。君は」
「は?」
苛立っている幹太とオカマを、縁側から交互に見ていたお義母さんが、丸めた手を、ポンっと片方の広げた手に打つ。
「巴ちゃんだわ」
「は?」
「住職さんの家の、巴ちゃんよ。ほら、幹太くんが小学生の時に喧嘩して一方的に殴った巴ちゃん」
お義母さんが思い出したかのように、礼服の着物の裾で口元を押さえる。
「酷い悪ガキで、晴哉もよくいじめられたのよ。本人は気づいてもいなかったけど。やだわあ。面白い恰好しちゃって」
「巴……?」
今さっき話していた一個上の悪ガキの名前が、巴だったかなんて私は覚えていないけど。
幹太は心当たりがあったらしい。バツが悪そうにオカマの方を見た。
「もしかして、お前が今日の二周忌の法要に?」
露骨に嫌そうな声で幹太がそう尋ねると、くねくねと身体を動かしながら、巴という男は頷いた。
「辺り。クソジジイが出る直前に腰が痛くなっちゃって」
「帰れ」