嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
「ええ? 何がですか?」

慌てる美麗ちゃんは可愛いけど、私は声高々に教えてあげた。

「だからぁ、美鈴ちゃんは幹太しか眼中にないから、咲哉くんなんて相手にもしないのよう」

「あ……、あはは、咲哉くんにもバレてたんですね」

苦笑する美麗ちゃんは、妹の事を庇いたくてその手の話は避けていたようだった。
美麗ちゃんは舞踊の本家なのだが、昨年、美麗ちゃんを押しのけて自分が跡取りになると、妹の美鈴ちゃんが名乗りを上げた、鹿取家のお家騒動。

結構、周りの馴染みの方々はハラハラと結果を待っていたんだけど、結局身を引いた美麗ちゃんも幸せそうだから良かった。

美麗ちゃんとは正反対で、ハキハキチャキチャキした美鈴ちゃんは、お客にも厳しい幹太を気に入ってくれている。

多分、――それ以上の感情で。

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