嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
「幹太って本当に鈍いよねぇ。あんなに可愛くて若い子がアプローチしてくれているのに」
溜息を吐きながらそう言うと、今度は美麗ちゃん達が、気まずげに視線を交わした。
「何?」
「いや、人って自分の事には鈍感になっちゃいますね、って思いまして」
「ああ、なるほど。幹太は確かに鈍感そうそう」
「――悪かったな」
私の背中から、ミサイル――いや、地雷原が歩いてきた。
慌てて手を止めていた作業、美麗ちゃん達は戻って行くが私は丁度、手が開いていた。
本当にたまたま。
幹太は私に恨みでもあるのかと思うほど、暇を持て余している時を狙って注意してくる。
「もうすぐ30に届きそうな幹太は、何歳ぐらいまでが恋愛対象範囲内?」
「咲哉、裏口の前に積んでいる和菓子、結婚式場まで持っていけるか?」
「あ、はいはーい」
「はいは一回にしろ」
冷たくそう言い放つと、咲哉くんはビビって首を何度も縦に振る。
そのまま作業衣を脱ぐとバイクを走る為に着替えの準備へ消えていく。
「ねえねえ、聞いてる?」