嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
一、鬼は外、鬼は外。
「鬼は、外! 鬼は外!」
「あああ、桔梗ちゃん、止めてちょうだい! 酷いわ。姑いびりよ!」
「うるさい! ぜーんぶ、ぜーんぶ、鬼は外じゃああああ! 姑いびり万歳!」
晴哉の二周忌に、晴哉の家でうちの家族や幹太の家族、そして住職さんを持ちながら私は庭へ豆まきの様にあるものを大量に投げていた。
お義父さんは、晴哉の忘れ形見の晴一(はるいち)を抱っこしながら私たちを呆れた顔で見ている。
「だって、貴方はまだ28歳よ。晴哉のことも可愛い孫の晴一ちゃんのことも感謝しているけど、けど、せっかく美人なんだから新しい恋をするべきよ」
「うるさい! なんで晴哉の二周忌でこんなことするのよ! お義母さんなんて大嫌い!」
地響きがしそうな音を立てて、纏めて投げた。庭には、色んなお見合い写真が散らばっている。
そう、お義母さんがお節介を焼いて私にと持って来た大量のお見合い写真を。
おろおろ悲鳴を上げて、縁側を右往左往するお義母さんは、晴哉に似て穏やかでのんびりした優しい人なんだけど。
最近、ちょっとしつこいぐらい背中を押してくるからもういい加減、はっきりさせておこうと思う。