嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。

「何回も言ってるのに。今は仕事でも主任になって忙しいし、晴哉以上の男なんてこの世に存在していないって。何度も何度も言っているのに」
じわりと目頭が熱くなると、お義母さんが慌てて私に寄って来て、一緒に目頭を熱くさせる。
「私もよ、私だって自慢の息子なのよ。でも、でもぉ」
「お義母さん……」
二人で手を握り合い、わんわんと泣いていたら、裏門がぎぎぃと錆付いた音を立てて開く。
「何をやってんだか」
呆れたように溜息を吐きながら、大きな包みを持った礼服の幹太が入って来た。

くっきりした二重に、男らしいスッとした眉毛、高い鼻、礼服の上からでも分かるラグビー部で引き締まった身体。
物心ついた時から無口で、しかめっ面で、無表情で、威圧的なオーラを放っていた幹太が、怪訝そうに私たちを見ている。

「お義母さんがお見合い写真で節分しましょうって言うから」
「酷いわ! そんな意地悪な言い方、もう私泣いちゃいますからね」
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