嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。

「ありがとう。幹太くん。もうすっかり大人になったわねぇ。桔梗ちゃんの暴走を止められるのは幹太君だけよ」

おいおいとお母さんとまたバトルしようと思ったら、幹太が先に縁側に落ちているお見合い写真を手に取った。

「今日は俺も晴哉を偲びたいな」

ただ、その一言。

その一言で、お義母さんは近くにあった、まだ蒔かれていないお見合い写真を紙袋へ戻していく。
私があんなに外へ放ったり怒鳴っても止めない癖に、幹太のたった一言で大人しくなるんだから。

「晴一と、桔梗ちゃんのご両親を迎えに行ってくるよ。住職さんが遅いけど早く来てくれって」

お義父さんが立ち上がり、晴一を抱き締めながら縁側へ降りて行く。
流石、私の子供。一歳にもなると私じゃない人に抱き締められても泣かなくなった。
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