嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
「少しは落ち着いたか」
なかなか来ない住職に痺れを切らしたのか、お義母さんは台所へ戻り、幹太はベビーウォーカーを片手で前後に押しながら、滑り心地を試している。
「落ちつく? やっと私が落ちついた女性に見えてきた?」
ふふっと笑うが、幹太は表情を変えないでじっと此方を見る。
「何か言いなさいよ」
「晴一が生まれた時は、ああやっておじさんと外に出かけさせるのも怖がってたろ。自分の目が届かない所に行くと、お前不安そうで、晴一に依存してた」
「そうだっけ? 晴が私以外に抱かれると泣くから私がずっと抱っこしていただけよ?」
きょとんとした私とは反対に幹太は呆れたように深い溜息を吐くと段ボールを小さく折りたたみ始めた。
「無自覚かーー……」
「何よ」
「性質が悪い」
「はあ!? あんた、喧嘩売ってるの!?」
幹太は昔からこうだ。
眼つきは悪いし、声は低いし、おまけにラグビー部だったから身体もがっちりしてるしで、威圧的で見た目が怖い。
それなのに言葉が少ないんだもん。言うより自分が飲み込んだ方が早いとか、動いた方がいいとか思ってそう。