嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。

「相手が死ぬ前に後悔しないように伝えることは確かに大事だものね」

死に前にって。
そんなのいつ死ぬかなんて誰も分かりはしないのよ。
私も、幹太も、――晴哉も。

「じゃあ、私も幹太の事を逃げてる間に死んじゃうことがるのね」
「やだわ。桔梗ちゃんったら不謹慎」
坊主が言うな。このオカマ坊主。
「その話し方、わざと過ぎて気持ち悪いだけですから!」
私と巴ちゃんを睨みつけながら、美鈴ちゃんは幹太の方へ向かう。

「一番に幹太さんを大切にしないのなら、私も諦めがつけませんから」

そのまま車の方へ小さく手を振ると、幹太は窓を開けて此方の方へ顔を向ける。

「やばっ 行くわよ、巴ちゃん」
「りょーかい。さあ、乗って!」
巴ちゃんがヘルメットを投げてよこしたけれど私は大きく首を振る。
いや、私乗れないって言ったじゃん」
「じゃあ、どうするのよ」
「歩こうよ」
目を見開いて呆れかえった顔をする巴ちゃんだが、元の顔が悪くないので面白い顔にはならなかった。
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