嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
夕焼けをバックに、巴ちゃんと少しだけ世間話をした。
けれど、気づいたら、いや、共通の話題と言ったらやっぱり晴哉の事ぐらいだった。
「巴ちゃん、私がマラソン大会で一位になった新聞を破いたの覚えてる?」
長い影が、私と巴ちゃんの影に落ちてまるで重なって寄り添うような影になる。
ビルだったり柱だったり、車だったり。
オレンジ色の頭を染めながら、巴ちゃんは真面目な顔で頷いた。
「ええ。忘れていないわ。むしゃくしゃしていたのよ。あの時」
「子供って残酷だよね。そんなことして、破られた私が傷つくとか関係ないもんねー」
そう言えば、謝ってもらってなかった。
セロテープで留めたツギハギだらけの新聞は、まだ晴哉の家に飾っている。テープの部分が黄色く変色しても、一位になって笑顔でピースする私が。
「貴方は、上手にいきていて大切にされていて大嫌いだったのよ」
ふふふと笑う巴ちゃんから、一滴の汗が顎を伝い地面へと落ちていく。