嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。

「いきなり告白してきたくせに、なんで嫌いだったのよ」
「この前、春月堂へ行った時、貴方後ろを振り向いて幹太が居ないか探したわよね。私を追い払おうとして彼を」
「そうだっけ?」
「今も、自分で断らず親の手術を理由に逃げようとしてた。貴方は、そうやって上手に逃げて生きて来たのよ。優しい二人の幼馴染のお陰よね」

その言い方には、刺は無かったがふんわりと目尻を滲ませて笑っている。

「守られてぬくぬくと、だから視界に入ると苛々してたのよね。まあ、視界に入る時点で意識していたんだろうけどさあ」

クスクスと笑われたら、どんな顔をすればいいのか分からない。

「私は、巴ちゃんの事なんてこの年になるまで知らなかったんだよ」
困ってしまってそう言うと、巴ちゃんは平気そうな顔だった。
「他の人に興味なんてなかったじゃない。晴哉晴哉、幹太の事も後回しで」
「何? 巴ちゃんって幹太狙いだったりするの?」
ふざけてそう聞くと、困ったような悲しげな顔をした。
それが夕焼けに浮かんで、哀愁さえ感じてしまうほど。
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