嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。

「頷いたら貴方が安心するなら、そんな嘘、平気で吐けちゃうわ。私」
「つまりどうなのよ」
困ったようにそう尋ねると、面白そうに首を傾げる。
「そうねぇ。あたし、晴哉と幹太に大きな借りがあるの。だから首を突っ込んじゃったのよ。ごめんね」
「……?」

つまりどんな意味なのかと巴ちゃんを見上げたが、その薄茶色の瞳はなかなか答えをくれなかった。
「貴方に話したいことが一杯在りすぎてどれから伝えればいいのか、迷っちゃうわね」
「取り合えず思いついたことから喋りなさいよ」

また明日も仕事だし、晴を義実家に預けっぱなしなのも気がかりなんだから。


「じゃあ、貴方はどうして現状打破しようとしないの? 貴方ならもっと前向きに生きていると思ってたのに。事故の過去に引きずられて料理も乗り物にも難色しめちゃって」
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