緑の扉と遠い過去
元々、今から数年前にも同じような出来事があり、祖父母の家に遊びに行った事があった。

しかし、彼は以前、文字通り何もない祖父母の暮らす田舎で退屈な日々を過ごした経験があるのだ。

そんなこともあって彼は浮かない顔をしているのだが、結局彼の望みは叶えられることはなかった。

「令二、何ふて腐れてるんだ。そんな顔をじいちゃんやばあちゃんに見せるんじゃないぞ」

「だって…」

「何が不満なんだ。お前、じいちゃんやばあちゃんのこと好きだったじゃないか」

運転席からルームミラー越しに父親は睨みを利かせた。

助手席の母親も令二には手を焼いており、何を言っても聞き入れない令二に半ば呆れ果てている。

「嫌いになったわけじゃねぇよ。けど…今年の夏こそは海外に行きたかったの。聞いてよ、田中君なんて今ごろはハワイに居るんだよ」

「余所は余所、ウチはウチだ。そんなに田中君のところがいいなら田中君のところの子になれ」

「…」

「あなた…今のは少し言い過ぎよ。令二だってそんなことが無理なことくらい分かる年頃よ」
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