緑の扉と遠い過去
「母さん、そうやって令二を甘やかすからこんな風に育ったんだぞ」

「何よ!平日はろくに面倒見ないくせして、休みの日ばっかり偉い顔しないでよね」

「俺は働いてたるんだ。お前のように一日中家の中で過ごしてるわけにはいかないんだぞ」

「何よその言い方。そんなに言うんだったらあなたが家事を変わってよ。代わりに私が働きに行くわ」

いつの間にか話の対象がお互いの生活感に対する不満へと変わっていた。

そんな光景も昔ならほとんど見る事はなかったが、今ではほぼ日常茶飯事と言えるほどありふれたものになっている。

そして、収拾の付かなくなった二人を仲裁するのが最近の彼の役目なのだ。

「止めなよ二人とも。そんなことで揉めるくらいなら今年はどこにも行かなくていい」

「…」

「…」

子供に叱咤され、ようやく冷静さを取り戻した両親ではあったが、気まずい元々の雰囲気を原因を作った令二も同時に言葉を失った。
< 3 / 6 >

この作品をシェア

pagetop