英雄の天意~枝葉末節の理~
「俺が王都で騎士になれば、大きな家や工房や、高い資材だってお前に与えてやれるんだ」

 夢のような話でもナシェリオの腰を浮かせるだけの魅力はなく、旅をする願望も理由も不満も今の暮らしにはない。

 それでも鍛えているのは、やはり両親の血によるものなのかもしれない。

 当然だが自身の身を守るためでもある。

 村人は誰一人として知らない事だが、過去に商人の旅団のなかに奴隷商人が混ざっていた事があった。

 奴隷商人は旅団に紛れ、立ち寄った町や村で住人たちを拉致し奴隷として売りさばいていたのだ。

 旅団は旅の安全を確保するために商人たちがまとまって行っているもので、それに加わっている商人全てを把握している訳ではない。
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