英雄の天意~枝葉末節の理~
*かくて由あり
ガネカルを倒し十日ほど馬を走らせると比較的大きな街にたどり着いた。
モンスターなどに対する防備だろうか、街はやや高台に作られており一定の距離に監視塔がぐるりと建てられている。
ナシェリオは街の始まりを示す石の門を見上げて馬から下り、マントのフードを目深に被り馬の手綱を引きながら人混みを歩く。
この街は十数年振りだろうか、当時と変わらず商店が多く活気に満ちている。
時折すれ違う幾人かは、フードから垣間見えたナシェリオの顔に振り返っていた。
「そこの旅人」
ふいに女の声に呼び止められ視線を向ける。
声の主は見たところ占い師だろうか、青い布がかけられた小さなテーブルの前に腰掛け、女の小さな頭ほどもある透明の水晶球が赤いミニクッションに乗せられていた。