英雄の天意~枝葉末節の理~
 黒いヴェールは取り払われ、華やかではないものの充分に異性を引き付ける静かな美貌には感情があまり見られない。

 全身を包んでいるドレスはシンプルながらも女の神秘性を強調するようにしなやかに裾を揺らしていた。

 しかしナシェリオはその風貌に怪訝な視線を送った。

「ハーフエルフか」

 どうりで不思議な力があるはずだ。

 エルフは美しくすらりとした容姿と尖った耳が特徴だが、彼女の耳はエルフよりもやや丸みを帯びており、エルフとは違った存在感をまとっていた。

 エルフは人間よりも太古の昔から存在し、この世界を支配してきた種族の一つだ。

 彼らはとても美しく永遠の生命と強靱な肉体、不可思議な力を持っている。

 ラーファンはよく

「エルフはずるい」と言っていた。

 美しさも強さも、永遠の命まで持っているなんてエルフはなんてずるいんだ。

 それに引き替え俺たち人間のなんと脆弱(ぜいじゃく)なことか。
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