英雄の天意~枝葉末節の理~
「それは大変でしたね。ナシェリオ! 傷薬があったろう」

 振り返りナシェリオに薬を出すように促す。

 しかしナシェリオは二人の男に怪訝な表情を浮かべた。

「獣か何かに襲われたんですか?」

「ああ、そうだ。歩いていたら獣に襲われてなんとか追い払ったが……。旅の途中か?」

「はい。ナシェリオ、早くしろよ」

「君の友達かい?」

 怪我をした男は馬にまたがるナシェリオを見て問いかけた。

「そうです。すいません、臆病な奴なんで」

「いやいや、無理もない。こんな所で兵士に会うなんてびっくりしただろう。しかし、君の友達はとても綺麗だな」

「そう言われるのは本人はあまり好きじゃないみたいです」

 初めて見る兵士にラーファンは羨望の眼差しを向けた。

 村に時折訪れる旅団が雇うのはほとんどが放浪者(アウトロー)か暇な渡り戦士だからだ。
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