英雄の天意~枝葉末節の理~
 名のある商人がいた場合、王都の兵士などが加わる事も多くはないが、兵士は旅団から離れる事がないため目にする機会がない。

「へえ、そうなのか。勿体ないねえ」

「道に迷いでもしましたか?」

 三十代後半ほどと思われる兵士に尊敬の念を込め丁寧に接する。

 ラーファンにとっては剣を持ち戦う者はすべからく敬意を払うものなのだろう。

「そうなんだ。出来れば近くの集落を教えてほしい」

「解りました。おいナシェリオどうしたんだ、早く薬を──」

 馬から下りようとしないナシェリオに苛立ち振り返った刹那、ラーファンと兵士の間に剣が突き立てられた。

 ナシェリオが投げたものだ。
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