英雄の天意~枝葉末節の理~
「ラーファン、それは獣にやられた傷じゃない。剣によるものだ」

 その言葉で彼は二人の兵士を凝視した。

 兵士が戦場から逃げ出す事は少なくはない。

 割に合わないものに命を賭けるほど彼らとて馬鹿ではない。

 町は王都から兵士を要請するも、辺境の町に精鋭を送り込む程には西を重要視はしていないようだ。

 送られてくる兵士は素人に毛が生えた程度の者か荒くれ者、大した強さは持ち合わせていない者ばかり。

「逃げてきたからどうだっていうんだ」

 男はナシェリオを睨みつけた。

「傷の治療だけで終わらせる気はないんだろう?」

 逃げた先に約束された生活が待っている訳でもない。

 大抵はその後ろめたさから元の場所に戻れず、盗賊に身をやつしてしまう。

 ナシェリオはそれを知っている。
< 135 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop