英雄の天意~枝葉末節の理~
「ナシェリオ、なに言って──」

 ラーファンが苦笑いを浮かべた瞬刻、ナシェリオは素早く馬から下りて駆け寄り地面に突き立てた剣を掴んで男を斬りつけた。

「ぐお!?」

「きさま!?」

 突然の事にラーファンは訳がわからず、友と男たちを交互に見やる。

 ナシェリオには解っていた、彼らには初めから殺意があった事を。

 ナシェリオがまず気付いたのは兵士の立ち位置だ。

 怪我をした仲間を気遣いながら、何故常に一定の距離を保ち互いに離れていたのか。

 彼らの腰にある刃物の大きさを考えれば、それは剣を抜き易い間に他ならない。

 さらには、ラーファンが振り返る度に剣の柄に手を添えたのを見逃さなかった。

 彼を人質に取られてしまえば身動き出来ない。
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