英雄の天意~枝葉末節の理~
*拠り所なき悲嘆
あれほどに胸を躍らせた風景はナシェリオから全てを奪い、暗く闇の縁に立っているように重々しく流れてゆく。
村の人たちにどう説明すればいいのかと、そればかりがナシェリオの心を満たしていた。
馬のために時折休憩するも、食欲がまるで湧かないことに己の体の変化を知る。
試しに干し肉をひとかじりした。
味覚に変化はない。
それで理解したのは、今までの食欲とは異なるということだ。
ゆっくりと腹は減るけれども、特定の何かを食べたいという強い欲求が希薄になっている。
次に気がついたのは身体能力だった。