英雄の天意~枝葉末節の理~
「あなたの償いはもう終わっている」

 これ以上は誰も、何も望みはしない。

「お前が決めることじゃない」

 応えて、けだるそうに上半身を起こしたナシェリオはふと、ベッドに並んで腰を掛ける状態であるのに眉を寄せる。

 そんなナシェリオに対し、エスティエルは素知らぬふりで視線を外した。

「わたしは、死から見捨てられた英雄に興味を持ち、その村を訪れました」

 唐突に切り出された話に眉間のしわを深く刻む。

「彼らはそのことを商人たちから聞いたようね。知ったときにはとても驚いたと言っていたわ」

「言えるはずもない」

 不死などとナシェリオ自身もそのときは疑わしかったのだから。
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