英雄の天意~枝葉末節の理~
「わたしがあなたのことをよく知り得たのは、あなたが残した物が沢山あったから」

 あなたが姿を消してから五年ほど経った頃に私がその村を訪れたようです。

 英雄の家だということで時折訪問する者のためと、いつかあなたが帰ってくるかもしれないと家屋は残されていた。

 それでも、毎日のように少しずつ物がなくなっていき、ついには家の中は空になった。

「気に入っていたものほど記憶が残りやすく、使っていた者とのつながりも強い」

 そうしてわたしは、あなたのことを知ることが出来た。

 村の人たちとあなたの間にはとても大きな意識の差があったこと。

 彼らはそれをまるで考えてはいなかったこと。

 それがあなたを村から遠ざけたこと──どれほどにあなたの胸を突き刺したでしょう。




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