英雄の天意~枝葉末節の理~
 レイアは、せめて自分だけはとラーファンの両親と共に彼の死を悼み、その帰りの道にナシェリオが村を去ろうとする姿を目にした。

 しかし、それを見ていて引き留めなかった。

 引き留めることでナシェリオ自身を苦しめることになると彼女は解っていたからだ。

 どんな理由にせよ、彼はようやく自分のしたいことが出来るのだ。

 己の哀しみよりも彼の幸福を願おうと、遠のく背中をいつまでも見つめていた。

 泥にまみれて遊んだ日々はとうに過ぎ、それぞれの性別や性格に適した暮らしに移り変わってもレイアが見つめていたのはただ一人だった。
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