英雄の天意~枝葉末節の理~
[そなたからは、かの同胞の力を確かに感じる]

 誰の事を差しているのか、ドラゴンの同胞ならばすぐに察しがつく。

 大きな罪と罰を背負わせたその影を思い起こし表情を険しくした。

[我もまた、過ぎ去った同胞と同じくするものなり]

 唸るように紡がれた言葉が頭の中でこだまする。

 こいつは何を言っているんだ。

「他をあたればいいだろう」

 人間にお前たちの意思を押しつけるな。

[そなたは相応しき者として選ばれた]

「勝手に決めるな──やめろ!」

 ドラゴンはナシェリオの叫びを聞き入れる事なく、鋭い爪で自らの胸を切り裂きナシェリオに血しぶきを浴びせた。

 まだ罰が必要だと言うのか……。

 弄ぶのもいい加減にしろ。

 残されたナシェリオは片膝をつき束の間、地の底に恨みをぶつけるようにその足元を睨(ね)め付けた。




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