英雄の天意~枝葉末節の理~
「そうとも言えません」

 ナシェリオは返された言葉にいぶかしげな表情を浮かべる。

「あなたの力は、これから話す事柄の重要性を感じさせるものだから」

 ますます顔をしかめた英雄を一瞥し、エスティエルは何を話すかを慎重に選ぶ。

「初めに異変を感じたのは我が父、アナケス」

 ナシェリオが興味を示した事を確認し、淡々と語り始めた。

「父はこの世界を調べていると言いましたね。彼は主に魔力(マナ)の流れを研究しています」

 各地を巡り、マナの地脈を出来うる限り詳細に調べ歩いております。

 マナの流れや痕跡を辿ることで、この世界を知ろうというものです。

 マナはこの世界の誕生と共に存在し、あらゆるものに宿りながらその特性を変化させてきた。

 しかれども、その本質は変わらず常に普遍だ。

 この世界に住む者たちが性質を変化させ使いやすくしてきたに過ぎない。
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