英雄の天意~枝葉末節の理~
 その影が持つ力は何者をも退けるほどに強力です。

 近づこうとしましたが負の霊気(オーラ)に弾き飛ばされました。

 よほどの恐怖だったのだろうか、エスティエルは血の気が引いたように青白い顔になった。

「おそらく、あなたでなければ近寄ることもままならないでしょう」

 揺るぎのない眼差しで発したエスティエルを無言で見上げた。

「そんなことを告げるのに、どうして私を見定める必要がある」

 その問いかけにエスティエルはふと表情を緩める。

「あなたは己が不幸だと思ったことは?」

「あると思うか。不幸なのはラーファンを喪った彼の両親と命を落としたラーファン自身だ」

 私は犯した罪の報いを受けているに過ぎない。

「でも、もう一人はそうは思えなかったようよ」
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