英雄の天意~枝葉末節の理~
「もう一人?」

 含みのある物言いに若干の苛つきを見せながらも、慎重になっている彼女の返答を待った。

「あなたが償いを続けている間にその者は黒き力を身につけた」

「私に関係している人物なのか」

「あなたがよく知る人よ。償いを続けてきたのもその人のためでしょう?」

「馬鹿な!」

 目を見開いて立ち上がる。

 エスティエルが発した言葉をにわかには信じられず、ナシェリオは当惑して体を震わせた。

「そんなことが──」

 あってたまるものか。

 彼であるはずがない。

「わたしも確証がなければそんなことは言わない」

 しかし、あなたを知り、疑いは確実なものとなりました。

「わたしの言葉だけでは信じられないでしょう」
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