英雄の天意~枝葉末節の理~
*凍える大地
エスティエルとの話のあとナシェリオは草原で鹿を狩り、さばいた肉を馬に提げて近くの岩山に向かった。
その肉を比較的拓けた山の中腹あたりにばらまき、馬を放して距離をとるようにと指示をする。
馬は言葉を理解したのか、そのようにした。
充分に馬が離れたことを確認し岩陰に身を隠す。
しばらく息を潜めていると、頭上から強いはばたきの音が聞こえ大きな影が降りてきた。
気付かれないようにそっと覗き込む。
そこには、全身が赤黒く分厚い皮に覆われた生き物が生肉を貪っていた。
爬虫類にも似ているが前足はなく、そこには一対のコウモリに似た翼が伸びている。
長い尾まで入れるとナシェリオの三倍はあるだろうか。
翼竜(ワイバーン)はドラゴンの眷属とも言われ、凶暴ではあるがその知能は低く調教が可能だ。