英雄の天意~枝葉末節の理~
 注意すべきは鋭い牙と強靱で柔軟な尾にある毒針だろうか、それをしのげば兵士の数人もいれば捕らえられるモンスターではある。

 調教されたワイバーンは希少ながらも、王都には十数匹程度が飼い慣らされている。

 調教は特別な技能を身につけた調教師でなければ飼い慣らす事は出来ず、調教されているからといって乗り心地がよい訳でもなく優秀な乗り手を必要とする。

 ナシェリオは餌に夢中になっているワイバーンの前に姿を現し、それに驚いた刹那に右手を突き出した。

 張り詰める緊張感のなか、甲高いワイバーンの咆哮(ほうこう)に呼応するように金属が共鳴でもしているような音が一人と一匹の間に鳴り響く。

 威嚇を続けるワイバーンに怯むことなくナシェリオは突きだした手に力を込める。

「私に従え」

 口の中でつぶやき、瞳を険しくした。

 力比べでもしているかのごとく互いに見合い、ナシェリオの目が金色の輝きを放ち始める。
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