英雄の天意~枝葉末節の理~
*手にするものの姿
「どうしてお前ばかりがもてはやされる。どうしてみんな俺を見ない。お前の何が特別だというんだ。俺と何が違う!」
彼が何を言っているのかナシェリオには解らなかった。
現に、村ではラーファンは一番の人気者だった。
ナシェリオはそのおかげで阻害されなかったようなものだ。
けれども、ナシェリオは知らなかった。
村人たちが真実、期待していたのはナシェリオであったことを──北の民の子であり、実際に彼の両親は村を守った。
集落の住人たちは流れるその血に大きな期待をかけていた。
元来の穏やかな性格が災いしたと言うべきか、ナシェリオは人々が向けている視線にはまるで気が付く事がなかった。
「復讐か」
ラーファンが何を言っているのか解らないながらも、彼が何をしたいのかはその言動から充分に理解できた。