英雄の天意~枝葉末節の理~
 ──エスティエルはふと、空を仰ぐ。

「大地が震えている。目覚めたのね」

 かつての友と真に闘うことを選んだ彼の選択に、エスティエルは強く瞼を閉じ祈るように幾度か深く呼吸した。

 彼が覚醒し真実、英雄として歩むことを望んでいたけれど、それは彼が最後まで握りしめていた人としての僅かな欠片をも捨てさせることになる。

 そうでなければ勝つことは困難であるが故の希求ではあったがしかし、そうさせた事は心持ち気が咎めた。

 いま、彼女が望むことは、英雄が勝ち世界が救われることだ。

 ──ラーファンは煙をまといながら姿を現したナシェリオに息を呑み、口元を緩ませる。

「はっはあ! とうとうだなナシェリオ! 英雄がドラゴンになるとは、それではもうこの世界にいることは出来ない。さあ、俺と共に新しい世界を支配しようじゃないか」
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