英雄の天意~枝葉末節の理~
「うるさい!」

 交える剣は火花を散らし、互いのエネルギーがぶつかりせめぎ合う。

 大陸全体が小刻みに震え、あちらこちらで地に亀裂が走った。

 周囲に稲妻がほとばしり、二人の力が激しく衝突し空間は悲鳴を上げる。

 耳をつんざく甲高い音が塔の外にまで広く響き渡り、上空の雲は嵐のごとく渦を巻いた。

「これ、は……」

 ナシェリオの力はラーファンが目算していたものより大きかったのか、徐々に押され始める。

 ラーファンが力を強めればナシェリオはさらに強い力で対抗し、薄暗かった塔の内部はその輝きで遙か上の天井を照らすほどだ。

「お前は──これほどの力を持ちながらどうして!」

「それは私の望んだものじゃない!」

 必要とした者ならば喜びもしただろう。

 けれども、これは私の求めたものじゃない。
< 230 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop