英雄の天意~枝葉末節の理~

 寧静(ねいせい)な時間が続く──このまま己も消えないだろうかとふと願えども、それは適わないことも知っている。

「この世界は救われました」

 エスティエルの声が頭に響き目を開く。

「これで良かったのか、私には解らない」

「それは誰にも解りません。少なくとも、わたしたちは滅びずに済みました。大切な友を倒したあなたの心中、察します」

 彼が妬みを別のものに換えていたならば、あなたが村人たちを憎んでいたならば、運命は変わっていたのかも知れない。

 些細なことから流れは大きく先を変えてゆく。

 存在の全てが善しも悪しくも、何かを生み出すきっかけを備えている。
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