英雄の天意~枝葉末節の理~
「あなたの見ている世界は変わりましたか」

 ぽつりと問いかけられたナシェリオは、それに答えることもなく塔から抜け平地を見渡した。

 遠くには白い山脈が連なり、壮大な景色を創り出している。

 凍える大地は気がつけば、潤沢な魔力(マナ)を浴びたおかげか凍っていた土が溶け始めていた。

 空には鳥の姿が見え、凍える大地が大きく変わりつつあることを感じた。

「地中のマナの流れも少し変化したようです」

 細い流れだけれど、ヒュプニクスを再び緑の大地にするだけのマナが流れ込むようになっていた。

 全てのものには善しも悪しくも何かしらの役割がある──そんな言葉を思い出し、晴れた空を見上げて目を細める。

 その青さをしばらく噛みしめていると、どこからともなく獣の叫び声が聞こえた。
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