英雄の天意~枝葉末節の理~
 大きな街から遠く離れたこの村にも、ある程度の金銭は必要だ。

 ナシェリオのように手先の器用な者が工芸品を造り、定期的に訪れる商人たちにそれらを売って諸々の資金としている。

 商人たちは旅をしていると言っても刺激を求めている訳じゃない。

 出来うる限り危険のない道程を選び、街や集落を転々として自らの目に適った商品を買い集めそれらを高値で売りさばくために王都に戻る。

 そんな彼らから耳に出来る話などラーファンにはまるで興味がなかった。

 しかし、ナシェリオには違った。

 勇猛果敢に闘う戦士たちの物語は刺激的だが、商人たちが先々でめぐりあう品物の話にもナシェリオは目を輝かせた。

 磨き上げられた技で形作られる品々はその土地の特徴を色濃く宿しており、それぞれに美しいと驚嘆する。

 出来るならば工房に赴きその手さばきを目にしたい。
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