英雄の天意~枝葉末節の理~
「ラーファン」

 呼ばれた青年は手を振り返し同じく名を呼ぶ。

 ナシェリオは大きな篭を背中に抱えてトウモロコシの収穫に汗を流していた。

 村で実った農作物の収穫は村人総出で行う。

「なんだよ、お前まで手伝うことないだろ。お前は村の農機具の修理や工芸品を作ってるんだから」

 ラーファンは腰に下げた短めの剣の柄を握って溜息を吐いた。

「みんなでやった方が早く終わるだろ」

 少々、頼りなさそうな笑顔が親友を見上げる。

 畑にそよぐ風が山吹色の短髪を遊ぶように揺らし、上品な目鼻立ちは笑うと艶をにじませた。

 この二人はとても対照的だ。

 快活で野心家なラーファンと違い、ナシェリオは大人しくどちらかと言えば消極的な性格である。

 むしろ対局であるからなのか、二人は自然と気が合い常に共にいた。
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