英雄の天意~枝葉末節の理~
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私にあのとき、それ以上何が言えただろうか。
今なら彼を納得させるに足る説得が出来たかもしれない。
親友というだけでなく、兄とも慕っていた君を私という小さな存在によって危険に晒される事が私にとってどれほどの恐怖であったのかを伝えられたかもしれない。
かけがえのないものを失った者でなければ窺い知る事の難しい胸の痛みをどう説明すれば良かったのか。
今更に喧嘩の事など思い出しても後戻り出来る訳ではない。
どうしてあのまま自分を貫かなかったのかと悔やむ他に出来る事でもあるのか。