英雄の天意~枝葉末節の理~
◆二ノ章
*その灯火の救い
風が草花を撫でつけるように平野を足早に這いゆき、ざわざわと葉のこすれる音が駆け抜けてゆく。
波音は途切れる事なく耳の奥にこだまし、ここが陸と海の交わる場所なのだとナシェリオは感慨にひたった。
「村の近くにある洞窟に魔獣が住み着き、村人を襲っているのです」
「村を捨てればいい」
重々しく口を開いたニサファに英雄とは思えない言葉を浴びせる。
しかし、ニサファはそんな言葉にも動じずナシェリオを一瞥し話を続けた。
「やつは素早くどう猛で、村から逃げ出そうとした村人を襲って貪り喰いました」
そいつは村を餌場として村人を逃がさないつもりらしい、あまり心地の良い話ではない。
そして、そんな事をする魔獣といえば思い当たるのはごく限られた種だ。
想像するに、今までの者たちが打ち破れたのは頷ける。