英雄の天意~枝葉末節の理~
「その力を示せ」
つぶやいた刹那に刃は青白い輝きを放ち、額に獣の爪をかすめて振り下ろされた右前足を薙ぎ払う。
獣はそれに怯んだのか小さく呻いて後ずさりしナシェリオを見据えた。
よく見ると、刃を滑らせた前足にはわずかだが傷が出来ていた。
人よりもどす黒いそれは、流れるほどではなくじわりと毛の色を変える程度でしかない。
「たったあれだけ……」
ニサファは愕然とする。どう見ても英雄の額にある傷の方が大きい。
ナシェリオの額はぱっくりと割れ、左目の機能を障(さわ)るほどに流れ出していた。
それでも彼は剣を構え、臆することなくガネカルを睨みつける。
そうしてひと声、獣は鳴いて最後の攻撃に出た。
か弱き人間を噛み砕こうと口を大きく開き、力を込めるために右前足を踏みしめた瞬間──ナシェリオは剣を逆手に持ち替えその、ささいな傷をめがけて突き降ろす。
つぶやいた刹那に刃は青白い輝きを放ち、額に獣の爪をかすめて振り下ろされた右前足を薙ぎ払う。
獣はそれに怯んだのか小さく呻いて後ずさりしナシェリオを見据えた。
よく見ると、刃を滑らせた前足にはわずかだが傷が出来ていた。
人よりもどす黒いそれは、流れるほどではなくじわりと毛の色を変える程度でしかない。
「たったあれだけ……」
ニサファは愕然とする。どう見ても英雄の額にある傷の方が大きい。
ナシェリオの額はぱっくりと割れ、左目の機能を障(さわ)るほどに流れ出していた。
それでも彼は剣を構え、臆することなくガネカルを睨みつける。
そうしてひと声、獣は鳴いて最後の攻撃に出た。
か弱き人間を噛み砕こうと口を大きく開き、力を込めるために右前足を踏みしめた瞬間──ナシェリオは剣を逆手に持ち替えその、ささいな傷をめがけて突き降ろす。