英雄の天意~枝葉末節の理~
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それは、孤独に平原を彷徨っていたときのことだ。
生涯の友を喪った哀しみから、ナシェリオはあてどもなく歩いていた。
どこをどう歩いていたのかは覚えていない。
おそらく、ドラゴンが棲んでいた洞窟からほど近い場所だろう。
背の高い草に隠れるように、かつては建物だった形跡がそこかしこに垣間見えた。
それは捨て去られた大地、忘却の彼方に埋もれた名も無き都市──ナシェリオは呆然とそれらを視界に捉え、立ちつくしていた。
大陸の西方は辺境の地とされ大きな都市は無い。
ナシェリオのいた村のように、小さな集落が広い範囲に点在しているだけだ。
昔読んだ叙事詩には、西の大地にはエルフの国があったと書かれていた。
大きくはなかったが、地中に流れる魔力(マナ)のおかげで作物は豊かに実り、エルフたちは幸福であったとも記されている。