英雄の天意~枝葉末節の理~
「それだけ綺麗なら、金持ちどもがこぞって可愛がってくれるさ」

 男たちの持つ剣はどれも手入れなどしている気配はなく、刃こぼれの酷さに当たれば痕が残る傷になるだろう。

「売り飛ばす前にちょっと味見させてもらおうか」

 冗談ではないと男たちをきつく睨みつけたが、武器になるようなものは何ひとつ持ち合わせてはいない。

 周囲にあるものといえば大小の石ころ程度だ。

「おら!」

 ナシェリオは勢いよく突き飛ばされて小さく呻き倒れ込む。

 このままでは危険だと考えを巡らせながらも、気負いを悟られないように睨み続けた。

「おう、一生懸命睨んでるぜ」

「可愛いじゃねえか」

 下卑た顔に吐き気がする、こんな奴らに屈するくらいなら死を選ぶ。

 そんなナシェリオの指に何かが触れた。
< 60 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop