英雄の天意~枝葉末節の理~
 この感触は紛れもない金属だ。

 それも、刃物だと窺えた。

 おそらく地面に突き立てられている。

 これは剣だろうか、しかし短剣であっても何もないよりは闘える。

 問題なのは、どのような物なのか解らないことだ。

 刃だけを残してあとは折れてしまっているかもしれない。

 他の部分は錆びているかもしれない。

「動くんじゃねえぞ」

 考えている時間はない──ナシェリオは男たちを見据えたまま立ち上がり、刃の先にあるかもしれない柄に手を伸ばした。

 そうしてナシェリオの予想した位置にそれはあり、意を決して強く掴むと大きく踏み込んで薙ぎ払った。

 最も近くにいた男は咄嗟の事に避けきれず、醜い悲鳴を上げてずしんと転がる。

 それを見た他の男たちは声もなく驚き、いつの間にか青年の手に握られている剣に恐怖の面を貼り付けた。
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